僕の女神、君の枷~幸せって何だろう?
あれから何度か彼に会った。
畠山孝幸だっけ?
よく見ると、結構綺麗な顔した好青年。
背もそこそこあって、油っぽくないし、毛深くもない。
そりより、何より、男の癖に『マメ』なの。
わたしが目にする彼は、料理してるか、掃除してるか、洗濯してるか。
ママと三人で食事をする時は、いろいろ話したりもする。
まあ、どっちかっていうと聞き上手?
上手いこと相槌打って、ママの仕事の話とか、あたしの日常とか、いつの間にか喋らされてるって感じ?
内気なのかと思ったけど、そうではないみたい。
一通りあたし達の話しを聞き終えると、話題の映画の話とか、今、どこそこの美術館では何をやってるとか、ママやあたしの好きそうな情報を持ち出してきては話題を変えるの。
ガス抜きしてリフレッシュ?
きっとママをデートに誘ってるんだろうけど、あたしがその場にいれば必ず「良かったら好美さんも一緒に行きませんか?」って聞いてくれる。
会ったばかりのあの日、わたしが彼のことを『執事』と呼びたい気持ちになったのも、自然と目に映った彼のそんな気配りを感じたからだったんだと思う。