僕の女神、君の枷~幸せって何だろう?

「君はまだ若いじゃない。
これから結婚して、子供を持って、幸せな家庭を築く。
そういう先の明るい人生を、いくらだって描けるんだよ。
こんなお婆ちゃんにこだわるのは間違ってる。
だいたい、あたしは一人でちゃんと生きていけるし、今の生活にも満足してる。
あたしは幸せだよ」

『幸せ』という言葉を口にしたところで、ちょっと胸が詰まった。

確かに、住む家があって、仕事があって、着るものにも食べるものにも困らない。

贅沢はできないけど、何不自由ない暮らし。

今までの私なら、それを『幸せ』と呼んだだろう。

でも、今、『幸せ』という言葉を口にするのを躊躇する自分がいて。

その戸惑いはイコール、今に対する不安で。

自分を『幸せ』と言い切るには、私の置かれた状況は惨め過ぎたから。
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