僕の女神、君の枷~幸せって何だろう?
「嗚呼、これね。
昔、高校時代、あたしミッションスクールに通っててね、毎日礼拝があったの。
で、毎日聖書を読むわけ。
取り立てて宗教に関心があったわけじゃないんだけど、特に気に入った箇所にはこうして線を引いてたっけなぁ」
「そうなんだ。でも、ここの部分は特に汚れが激しいから、弘美さんのお気に入りの箇所なのかなって」
確かにそう言われてみれば、このページの部分だけ、妙に薄汚れている気がした。
見慣れた言葉。
心に刻まれた教え。
いつの間にか、自分の中に染み込んだ呪文。
「弘美さん、弘美さんはもしかして、こうやって毎日を過ごしてるんですか?」
彼の目が真っ直ぐに私を見た。
「えっ、どういう意味?」
私は問われた言葉より、彼の視線に動揺を隠せない。
「すいません、変なこと聞いて。愚問でした。明日も早いし、もう寝ましょうか……」
畠山孝幸は、そう言って私の肩に両手をかけると、そのままくるりとあたしの身体を反転させた。
「さ、いきましょう」
私の肩を押すように彼が歩き出す。
向かう先は私の部屋。