僕の女神、君の枷~幸せって何だろう?
「あ、多分帰りは朝になると思うから、戸締り、気をつけて下さいね。それから、洗い物すいません。おせちは見繕って買ってあるんで、お重に詰めといてもらえますか」
「うん、うん、わかったから、大丈夫だって、まかせといて」
いつになく焦ったような相槌と、上ずった声。
「と、弘美さん、一緒に年越せなくて残念です……」
僕は、急かす弘美さんを遮って、その時初めて彼女の変化に気が付いたんだ。
「また、来年もあるって……」
そう口にした弘美さんは、とても苦しそうで。
彼女はそのまま、顔を埋めるように僕を抱きしめた。
「気をつけてね。帰ってくるの待ってるから」
彼女は抱きしめる手を少し強めて、しっかりとした口調で僕にそう告げた。
突然の抱擁に、僕は彼女を抱きしめ返すことができなくて……
なんで、今?
この状況で。
僕の思考は、そこで一瞬止まって空回りした。