僕の女神、君の枷~幸せって何だろう?

でも……


彼女は僕を待っていてくれる。

僕には戻る場所がある。


だから、僕は行かなくては。


「行ってきます」


心配そうに顔を上げた弘美さんに、僕は思わずキスを落としていた。


しまった。

こんな状況で。


そっと触れるだけの、遠慮がちなキスだったけど。


痺れるほどの緊張と。

愛しい想いが溢れてきて。


「すいません……必ず戻りますから」


ポカンと放心した弘美さんの両肩を、少し力をこめて叩いた。


「ドア、鍵閉めて」


頷く弘美さんを確認し、僕は、外へと歩み出た。


東京の冷たい北風が、僕の頬を刺して。

熱を少しだけ冷ましていった。



願いが叶った瞬間。

直ぐに遣る瀬無い想いが僕を襲ったけれど。

僕は、嬉しさのあまり眩暈がした。
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