僕の女神、君の枷~幸せって何だろう?

「ほら、なら、なおさら、早く中へ入ってゆっくりしていただいたら?

お風呂も沸いてるし、食事の用意もできてるし……」

玄関から動こうとしない彼と彼の父親を、私は家の中へと促した。

「いや、わしはここで……

雨露さえしのげれば、それだけでもう十分だす」

消え入るような小さな声でそう言うと、彼の父親は玄関先へ座り込もうとする。

あたしは、腰をかがめ、その顔を覗きこんだ。

「どうぞ、お上がりになってください。狭い家ですけど」

ふと見た彼の足元の靴はボロボロで、破けた穴からは黒く汚れた足が覗いていた。

赤くはれ上がった指先が痛々しい。
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