僕の女神、君の枷~幸せって何だろう?
私は和室の押入れにしまった、亡くなった父の行李を開けた。
丁度一番上に、買ったままの寝巻きと下着を見つけた。
あとは、シャツとスラックス、それにセーターを引っ張り出す。
(そうだ、ベルト、ベルト……大分痩せてらしたから、ベルトがいるかも……)
取り急ぎ、揃えた着替えを風呂場へと持っていった。
「失礼します。着替え、ここに置いておきますね。身体に合わないかもしれないけど、良かったら着てください」
「すいませ~ん、弘美さん」
くぐもった声が風呂の中から聞こえた。
(あの感じだと、お粥の方がいいのかしら……
お雑煮と両方、用意しといた方がいいよね)
私は頭に、痩せて弱弱しい彼の父親の姿を浮かべ、お粥の用意にとりかかった。
(確か、中学生の頃から行方知れずって言ってたから、かれこれもう二十年ってことか……)
その気の遠くなるような年月に目眩がした。