僕の女神、君の枷~幸せって何だろう?
「ねぇ、こんなとこじゃ寒いから、居間の方へいきましょうよ」
私は二人を促して、居間のソファへ座らせた。
「わしにも、欲があったんだす。んだども、止めることができんかったす。もし、こっちゃある金が倍さも三倍さもなったずら、由布子に指輪のひとつも買ってやりたいと、ほんたらこと考えてたす。自業自得だす」
「だからって……」
「そいがらは、転がるように地に落ちたす。住所不定のわしに、たいした仕事は見つからん。わし一人が食うに精一杯の生活じぁ。由布子にも、たいした仕送り、できんかった」
「そんな金なんていいから、帰ってくれば良かったんだ。母さんがどんなに親父の帰りを待ってたか……」
「わしは、由布子に合わせる顔がね」
「母さんは、きっと、このお金が入金される度、親父の無事を確認してたんだ。だから、一銭も、この金に手をつけようとしなかったんだよ。母さんは親父の帰りをずっと待っていた。それだけは間違いない」
二人は、生きる場所は離れていたけど、送られてくるこのお金で、使われずに貯まっていくこのお金で、お互いの無事を確かめ合っていたのだろうか。
だとしたら、悲しすぎる。