僕の女神、君の枷~幸せって何だろう?
食卓に移り、私の気遣いはある意味杞憂だったと気が付かされた。
彼の父、畠山信幸は思いのほかよく食べたのだ。
「今の日本じゃ、残飯でもあさる覚悟があれば、飢えることはねだす」
雑煮の餅を頬張りながら、彼は確信に近くそう言った。
「コンビニじぁ、毎日、期限切れの残飯がではるし、レストランでも客の食べ残しが山盛りす。味さえ我慢すりゃ、食うものはなんぼでもあるんてが」
その横で、苦虫を噛み潰したような顔で彼が父親をじっと見つめていた。
――だからって、二十年、路上生活かよ……
彼はきっと、心の中でそう呟いているに違いない。
「んだども、こっちゃある歳になったらや、どうにも寒さが堪えまして。寒くて寝れねし、眠ったら最後、目が覚めねんじぁねかと心配で……」
私は、そう言って俯いた彼に目をやった。
そして、彼がそうやって残飯をあさってまで生き抜いてきた、そのわけを知りたいと思った。
『人はパンのみに生きるに非ず』
頭に浮かんだのは、そんな聖書の言葉。