僕の女神、君の枷~幸せって何だろう?
「ユウ、待ちなさい。公園行くなら帽子被って!」
「うるせぇ~、糞オヤジ! カッコ悪いだろっ!」
さっき前を通り過ぎたばかりのグリーンに塗られた板張りのカフェから走り出た少年を追って、懐かしい声が耳に届いたのだ。
あたしは咄嗟に頭に乗せた黒いハンチングを深く被り直し、前を向いて必死に足を前に進めようともがいていた。
今なら、何事もなかったように、彼の前を空気のように通り過ぎられる。
でも……、振り向きたい。
一目でいいから、彼の顔を見届けたい。
そんな葛藤で、あたしの身体は固まっていた。
どれ位時間が経っただろうか?
もう振り向いてもそこに彼が居るわけがない。
そうあたしが確信できる程の、長い時間が経った筈だった。