僕の女神、君の枷~幸せって何だろう?

事の真相は、つまりこうだ。

あたしに結婚を断られ、失意のうちに国へ帰った彼には地元に幼馴染みがいた。それが結婚した千代子さん。雄一くんの母親。

彼が地元に戻った時、彼女は丁度夫の浮気が原因で離婚した直後で。彼と彼女はお互いの境遇を慰め合い、良き友人として何年かを過ごしたのだそうだ。
早くに両親を亡くしていた彼女には彼の家族が唯一の拠り所であったのは間違いないだろうけど。それが、彼女の病気の発覚で急展開することになる。

母子家庭を支える為、必死で働いていた彼女は、自分の身体を労わることを二の次にして病気の発見が遅れた。
乳癌。気付いた時には、病巣は大きく成長し、リンパを介して全身に転移していて、もう痛みを取り除く以外、手の施しようがなかったのだそうだ。
それでも彼女はその現実を受け止めた。只一つ気がかりだったは、残された息子の行く末。そこで彼が考えたのが、彼女と結婚すること。
残された命に少しでも明るい希望を持たせたかったのだと。そして、何年かを近しく過ごした雄一くんのことを本当の息子のように愛しく思っていたのだと。
彼は淡々とした口調で話してくれたのだ。

結婚して、僅か半年で彼女が逝って。それからは、雄一くんと二人、親子の歩みを続けてきたのだと。
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