僕の女神、君の枷~幸せって何だろう?


「弘美さん、後悔してませんか?」


行為の後、僕は躊躇いがちに彼女に尋ねた。

「後悔? なんで?

あたしは、あなたを愛してるから、抱かれた。

そうでしょ?」

僕達は見つめあって笑った。

「なんか、僕、初めての時みたいに緊張しました」

「あ、あたしも」

「僕、学生の頃は結構もてたんですよ。専門学校の時は彼女と同棲してましたし。まぁ、生活費が半分で済むってことが最大の理由でしたけど」

「結構遊んでたんだ……」

「遊んでた訳じゃありませんよ。僕は真剣でした。でも向こうがね、正社員になれない僕に愛想をつかしたっていうか……」

「あたしは、別れた夫しか知らないから」

「そう思います」

「なんで?」

「弘美さんて、そういう人だと思うから」

「でも、結婚して好美が生まれてからは、殆どセックスレスだった」

「どうしてですか?」

「そんなのあたしにわかる訳ないじゃない。求められないからしない。ただそれだけだもの」

「自分から求めたりはしなかったんですか」

「そんな恥ずかしいことできないわよ」

「でもさっき、『抱かれたい……』って」

「あなたには素直になれる気がするの。見栄とか体裁とか、そういうもの抜きで素直なあたしを見せても安心っていうか。

あなたはあたしの素の部分を愛してくれてる、そんな気がするから」


「愛してます。凄く」


僕はしっかりと弘美さんを抱きしめた。
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