僕の女神、君の枷~幸せって何だろう?

そんな僕を見て、彼女は大きくため息をついた。

「あたしはさ、食べ物見て生唾飲み込むほど飢えたこともないし、人に見られるのが恥ずかしいほど落ちぶれたこともない。

だから正直なところ、今のあなたの気持ちは分からない。

でも、あたしが、今日、あなたを助けたのは、ただの優越感からだよ。

そんな褒められたものじゃない」

「誰にでもできることじゃありません」

僕はきっぱりと首を横に振った。

「あたしだって、幸せ一杯の生活を送ってるわけじゃない。

でも、辛うじて飢えたことはない。一週間のうち、一日か二日は休みも取れる。

あたしが今日、日ごろの憂さ晴らしに買い物でもしようと思ってた数万円で、あなたの人生がリセットできるなら、安いもんじゃない?

お金の使い方としても、ずっと価値がある。

それだけのことだよ」

「でも……」

「じゃあさ、大曲に帰って、自分をリセットして、また生きる元気が沸いてきたら、あたしに何か恩返しをしてよ。

それまで、あたしがあなたの荷物を担保として預かる。

それでどう?」

それなら、頷けた。
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