僕の女神、君の枷~幸せって何だろう?
都合の良い納得だとわかってはいたが、僕には理由が必要だった。
僕は、握り締めていた掌をゆっくりと開いた。
彼女はその掌から、摘むように鍵を取り上げた。
「じゃ、そのロッカーの場所、詳しく教えて」
彼女は手帳をバックから取り出すと、僕の説明を手帳にメモした。
そしてカバーに挟んであった名刺を一枚手にとると、その裏に何かを走り書いた。
「これ、あたしの仕事の名刺。裏に自宅の住所と電話番号書いといたから」
そう言うと、彼女はその名刺を僕に差し出した。
「はい、必ず取りに伺います」
僕は、頷きながらその名刺を受け取り、じっと眺めた。
〈お助け隊 介護ヘルパー 中山弘美〉
「意外?」
彼女が大きな目を細めて、笑いながら聞いた。
「いえ……」
僕は一瞬答えに戸惑った。
何故って、今僕の目の前にいる彼女は、幸せそうな家庭の主婦にしか見えなかったから。