僕の女神、君の枷~幸せって何だろう?

駅に通じるこの歩道橋は、結構な人通りがあった。

でも、誰にも僕の存在など目に入りはしない。

いや、見たくないというのが正解か。

ボサボサに伸びた髪、薄汚れた服、うつろな目。

明らかに浮浪者然としたこんな僕に、近づく者などいやしない。

僕はただのさらし者だ。

沢山の人が、僕に哀れみの眼差しを向けて通り過ぎた。

そのうち何人かが、遠巻きに小銭を菓子箱に投げ入れた。

今、箱の中には、百円玉と十円玉が数個ころがっている。

これだけあれば、パンの一個は買えるだろう。

いや、兎に角先ず、パンの一つも口にするのが先決なのかもしれないな。

人間食べなければ死ぬ。

僕の生存本能が、小銭をパンに変えて見せる。


パン。

先ずはパン。

兎に角パン。


だが、その僕の僅かな生きる望みは、一瞬で弾き飛ばされた。

誰かの足が、その箱を蹴ったのだ。

僕の目の前を、小銭が弾かれたように転がっていった。

僕にはもう、それを追いかける気力など残ってはいなかった。
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