僕の女神、君の枷~幸せって何だろう?

「どちら様ですか?」

あたしは、扉越しに声をかけた。

この古い家には、インターフォンなんて洒落たものはない。

只の呼び鈴なのだ。

「あの、荷物を取りにきました」

「荷物引き取りなんて、頼んでませんけど……」

私は仕方なく玄関の扉を開けた。

と、そこに立っていたのは、宅配業者の集配人ではなく、普通の男。

「どちら様ですか?」

私は、もう一度質問を繰り返した。

「あの、僕、数ヶ月前に大曲までの切符を買って助けていただいた、あの……畠山孝幸と申します」

「あ……」

そこに立つ彼に、あの時の面影は全くなかったから。

服装も顔付きも顔色も、ごくごく普通の青年で。

いや、むしろ、好青年。


ほんとにあの時の男?
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