僕の女神、君の枷~幸せって何だろう?
スーパーに入ると、彼はカートに籠を載せ、私の前を進んで歩いた。
「弘美さん、何にします? 和食? 洋食? 肉? 魚?」
振り向いた彼が、私に問いかける。
何だか、新鮮?
「君のリセット祝いに、すき焼きでもする?」
「う~ん、いいですね。
お酒はビール? 日本酒?」
「最初はビールで乾杯。で、後は日本酒かな? 君は、いける口?」
「弘美さん、僕、米どころ秋田の出身ですよ。飲めない訳ないでしょ」
「そんなの、人によるでしょ」
「僕、米と日本酒にはうるさいです。あ、お酒は僕に選ばせてくださいね」
得意げに笑うその顔には、あの時の面影は微塵もない。
(あの時が特別で、今がいつもの彼ってことなのかな)
なんだかいつの間にか、彼のペースに巻き込まれている自分に驚いていた。
まぁ、彼にとっては喜ぶべきことなのかもしれないけど。