僕の女神、君の枷~幸せって何だろう?
「秋田を出るとき、母に言われたんです。
信じると決めたら、とことん信じなさいって。
母に言われると説得力があるんですよね。
なにせ、二十年前に蒸発した父を、未だに待ち続けてる人ですから。
弘美さんは、僕の女神です。
僕はそう信じることに決めました」
彼、畠山孝幸は少し頬を赤らめ、真面目な顔でそう言ってのけた。
――だからって何なのよ。
十五近くも離れた、自分の娘とそう歳の違わないこの若者に、女神として慕われたからって、私の人生の何が変わるっていうのよ。
冗談じゃない。
「早く仕事見つけんのよ。家賃の五万はきっちり払ってもらうからね」
急に白けて、私が突き放したように釘を刺すと。
「わかってます。明日から頑張って仕事探します」
神妙な面もちの彼が、私の目の前にいて。
――私を女神だなんて、思い違いもいいところだ。
今にがっかりするだけだよ。
私自身が一番がっかりしてるんだから。
胸の奥がチクチクと痛んだ