僕の女神、君の枷~幸せって何だろう?
あれは、確か僕が高校三年の夏休み。
八月のある日、僕の家に一本の電話がかかってきたんだ。
夏休みではあるけれど、光熱費節約の為、僕は毎日図書館通いを決めていた。
だから、普段なら、それは誰も取ることのない電話の筈だった。
たまたま、僕はその日寝過ごして。
昼少し前、慌てて家を飛び出そうとした時、その電話が鳴ったのだ。
「姉さん、あたし、由紀子、久しぶり」
それは、母を姉さんと呼ぶ女性からの電話だった。
「あの、母は出かけて居りませんが……」
僕は慌てて、本人でないことを相手に知らせたけど。
「嗚呼、そっか、子供いたんだっけね、名前、なんだっけ?」
彼女はたいして驚きもせず、そう僕に問いかけた。