僕の女神、君の枷~幸せって何だろう?
僕は生まれ変わった。
新しい服に身を包まれ、産着を着せられた赤子のように。
いや、ただそんな気がしたんだ。
僕は必要なものをポケットから抜き取ると、着ていた汚れた服を丸めて紙袋に突っ込んだ。
トイレのゴミ箱は小さくて、服を入れた紙袋など到底入りそうもなかったけど。
(こんなものっ……)
それでも僕は懇親の力を振り絞り、力づくでそれを押し込めた。
少しだけ荒げた息を整えようと、ふと見上げた手洗いの前の鏡に目が留った。
あまりに浮浪者然とした自分の姿に驚いた。
慌ててボサボサの髪を手グシですいて撫で付けてみる。
(櫛があればいいんだが……)
髭もかなり伸びていた。
現実に気付いた途端、急に自分の姿が不安になった。
鏡に映った僕は、どう見てもやつれた中年男にしか見えなかったのだ。
(俺っていくつだっけ?)
それは確かに自分であるはずの他人だった。
こけた頬、窪んだ目、目立つ白髪、カサカサにひび割れた肌。
そこに見たのは、別人のように老けた自分の姿だったのだ。
だが、今ここで、この顔を取り替える訳にもいかない。
僕は今のこの自分を肯定するしかないのだ。
僕は諦めに近いため息を一つついた。