僕の女神、君の枷~幸せって何だろう?

駅前の喫茶店に入り、一通り注文を済ませると、由紀子叔母さんが母に向かってまくし立てるように質問を始めた。

「姉さん、駆け落ちまでして一緒になった信幸さんに逃げられたんだって?
ホント、姉さんらしいって言えば、姉さんらしいけど。それで、この子抱えて一人で頑張ってるってわけ?
そりゃそうよね、今更のこのこ帰れるとこなんてないものね。で、何とかなってるわけ?」

僕は、「駆け落ち」という言葉を耳にして絶句していた。


「逃げられたなんて……

信幸さんは、何か事情があって帰って来られないだけです!」


母は無口な人だった。

僕は、彼女が自分の意見を言ったり、ましてや人の意見に異を唱えるとこなんて見たことがなかった。

「すまないね」とか、「ありがとう」とか、そんな感謝の言葉を口にするのが常で。

その代わり、何でも行動で表すのが母のやり方だったから。


それが、今、目の前にいる母は、僕が今まで聞いたことがないくらい強い口調で叔母さんの言葉を否定した。
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