僕の女神、君の枷~幸せって何だろう?
帰りの列車の中、車窓に映る僕の顔を見ながら、母が呟いた。
「孝幸にも、嫌な思いをさせたね。
でも、これは母さんなりのけじめだから。
由紀子叔母さんを悪く思わないであげてね。彼女もずっと一人で苦しんできたと思うの。
母さん一人があの家を逃げ出して、その後を彼女が全て背負ってくれたんだもの」
「でも、母さんのこと、あんなに悪く言わなくったって……」
僕の言いかけた言葉を、母は静かに遮った。
「母さんは、幸せだったから、いいの」
そう言って笑う母の後ろに、僕はしっかり寄り添う父の影を見たような気がしたのだ。
幸せって何だろう?
僕はその時、初めて幸せという言葉の意味を、深く噛みしめて考えた。