限りない時代の如し~時ヲ越エタ桜ノ木~


幻覚か。

はたまた、何か。

夢か何かなのだろうか。

先程のものも幻聴で、あたしが病んでしまったというのか。

・・・いや、でも。

五感がしっかりと感じている。


「・・・あなたには、感じられますか」

「え・・・?」


振り向くと、声の主が現れた。

堀が深く、険しい表情からは見てとれないくらいの優しい声。

格好からして神主か何かだろう。


「望月の桜、というのですよ。この桜は」

「望月・・・?どういうことですか?」

「さあ・・・。それは私も知りえませんが・・・これだけは言えましょう」


神主さんはこう言った。


“この望月の桜は、満開を迎えることはないのです”


あたしはハッとした。

―――まるで、あたしのようだと。




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