限りない時代の如し~時ヲ越エタ桜ノ木~
「なぜ・・・なぜ、この桜は満開にはならないのですか・・・?」
「それもまた運命なのでしょう。・・・この木の持つ力は戦国の世から恐れられてきたものです。偉大であり、遺憾でもある。この木さえなければ、失われる命はなかったといわれることもあったそうです。・・・それくらいに、強大な力を持っている・・・」
あたしがもう一度桜に近づき上を見上げると、返事をするようにあたしの肩に桜の花びらがのった。
「それを償うように、この木を御神木とさせた女がいたそうです。」
「女・・・?」
「ええ。戦国の世に生きた、珠紀という女だったそうです。彼女は街に溢れかえる妖怪を退治する、巷では有名な侍だったそうです」
「た、まき・・・」
――あたしと同じ名前・・・?
偶然、とは思えなかった。
ここに来るまでに至ったのも、すべて偶然ではない・・・
そう思った。
「彼女はそんな中、ある男に出逢い・・・恋に落ちました。彼女は彼を愛し、そして彼もまた彼女を愛しました。・・・が、しかし。運命はそれを阻みました。」
「なっ、何があったんですか・・・?」
「さて、それは分かりません。しかし、彼女らはこの桜の木の下で・・・また逢うことを約束したそうです。・・・満月の夜、散りゆく桜の中で」
あたしの脳裏にパッと光景が浮かんだ。
―――――知っている。
幾度となく夢で見たのだ。
あたしと同じ容姿をした女と、綺麗な顔をした男が月夜で約束をする所を。
「彼女たちは・・・逢えたんですか・・・?」
「・・・あなたは、どう想います?」
神主さんは、御神木を見上げながら呟く。