限りない時代の如し~時ヲ越エタ桜ノ木~
「逢いたいといくら望んでも、逢えなかった・・・そんな話を、私の祖父がしていました」
「・・・」
逢えなかったのか。
他人事なのに、そうとは思えないほど胸が痛む。
「あなたは、不思議な方です」
「え?」
「この桜を見てもなお、現実だと理解している」
確かにおかしい。
今は夏で、桜は緑になっているはずで。
そして満開にならない桜なんてあるはずがなくて。
なのになぜ私はそれを現実だと受け入れられるか?
それは・・・
「あたし自身が・・・珠紀だからです」
「え・・・?」
あたしは無意識のうちに、そう言っていた。
すると神主さんはふふっと笑って、こう言った。
「そうですか。・・・なら、大丈夫そうだ」
「え?」
「戻りなさい、過去に。・・・そして、運命を変えてくるのです」
「何言って――――」
すると視界がぐにゃりと歪む。
薄れゆく意識の中で聞こえる神主さんの声。
“アナタノスベキ事ハタダ一ツ。
運命ヲ変エルノデス”