籠鳥~溺愛~
「は、はあ――!?」

(な、何言ってるのこの人ってば!?」

「はあ?じゃない。私がこんなに手間暇かけて育てたのに、横からほかの男にかっさわれるなんて、ありえない」

 鏡哉は至極真面目な表情でそう言い捨てる。

(そ、育てたって……)

「っていうか、は、離してください!」

 美冬は我に返りじたばたと鏡哉の膝の上で暴れだす。

「美冬ちゃんが誰とも付き合わないって言うまで、離さない」

 鏡哉はそう言うと、美冬の上半身をギュッと抱えなおした。

 お互いの薄い夜着を通して鏡哉の熱が美冬に密着する。

 広い肩が頬に当たって妙に熱くなる。

 鏡哉の胸に密着した腕に、規則正しいトクトクという鼓動が伝わる。

(は、恥ずかしい――!!)

 美冬の鼓動はドクドクとうるさいくらい加速していく。

「つ、付き合いませんから! 誰とも付き合ったりしませんから、離してくださいっ!!」

 叫ぶようにそう懇願した美冬に、鏡哉の腕の力が弱まった。

「よく出来ました」

 鏡哉は今度は美冬の額にチュッとキスを落とすと、少し名残惜しそうに美冬を解放した。

 美冬は鏡哉から離れ、おでこを手のひらで押さえて目の前に立つ。

 その美冬を見た鏡哉がくすりと意地悪そうに笑った。

「美冬ちゃん、真っ赤。可愛い」

「き、鏡哉さんのイジワルっ!! もう寝ますっ! おやすみなさい!!」

 美冬はさらに赤くなりながらそう言い捨てると、自分の部屋に逃げ込んだ。

 後ろからはくすくすと楽しそうな含み笑いが聞こえていた。
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