籠鳥~溺愛~
「社長、今日はご機嫌がよろしいですね」
社長室に入ってきたと思ったとたん、秘書の高柳は開口一番でそういった。
「はあ?」
鏡哉は無表情で聞き返す。
美冬と一緒にいるときは表情が緩むが、外へ一歩出ると鏡哉の鉄面皮はそのままだった。
「なんかいいことでもありましたか?」
鏡哉はいつも通り日ふるまっているつもりだったが、三年も一緒にいる高柳には鏡哉の機嫌が分かるらしい。
「別に」
「まあ、どうせ美冬ちゃんのことでしょうけれどね」
「ふん」
「この前久しぶりに会いましたけど、可愛くなりましたよね。あれじゃあ学校でモテるでしょう」
「……確かに、告白はされるといっていたが」
「ほお、じゃあ彼氏ができたら社長も複雑ですね」
「ふん、彼氏なんか作るはずがない」
「どうしてですか?」
「作らないよう命令したからだ」
当たり前のようにそう返した鏡哉に、高柳は呆れ返る。
「社長、いくら雇用主だからと言って、それはなんでも横暴なのではありませんか?」
「どうしてだ? 美冬は俺のものなのに」
「………」
いや、単なる家政婦だろうが――と高柳は心の中で思ったが言わないことにした。
「ま、異性との付き合いなんてダメだと言われたら余計興味がでちゃうものですからね。美冬ちゃんも年頃だし、社長。うかうかしていたらどこの馬の骨ともわからない子供にもっていかれるかもしれませんよ」
「……お前、減俸にされたいのか?」
「まさか」
高柳は鏡哉の脅しにびくともせずニコリと笑って見せる。
一方の鏡哉は高柳のその忠告に嫌な予感がし始めた。
「高柳! 今日は超特急で仕事を終わらせるぞ」
「かしこまりました。すぐご用意いたします」
そう言って畏まって社長室から出た高柳は、にやりと楽しそうにほくそ笑んだ。
社長室に入ってきたと思ったとたん、秘書の高柳は開口一番でそういった。
「はあ?」
鏡哉は無表情で聞き返す。
美冬と一緒にいるときは表情が緩むが、外へ一歩出ると鏡哉の鉄面皮はそのままだった。
「なんかいいことでもありましたか?」
鏡哉はいつも通り日ふるまっているつもりだったが、三年も一緒にいる高柳には鏡哉の機嫌が分かるらしい。
「別に」
「まあ、どうせ美冬ちゃんのことでしょうけれどね」
「ふん」
「この前久しぶりに会いましたけど、可愛くなりましたよね。あれじゃあ学校でモテるでしょう」
「……確かに、告白はされるといっていたが」
「ほお、じゃあ彼氏ができたら社長も複雑ですね」
「ふん、彼氏なんか作るはずがない」
「どうしてですか?」
「作らないよう命令したからだ」
当たり前のようにそう返した鏡哉に、高柳は呆れ返る。
「社長、いくら雇用主だからと言って、それはなんでも横暴なのではありませんか?」
「どうしてだ? 美冬は俺のものなのに」
「………」
いや、単なる家政婦だろうが――と高柳は心の中で思ったが言わないことにした。
「ま、異性との付き合いなんてダメだと言われたら余計興味がでちゃうものですからね。美冬ちゃんも年頃だし、社長。うかうかしていたらどこの馬の骨ともわからない子供にもっていかれるかもしれませんよ」
「……お前、減俸にされたいのか?」
「まさか」
高柳は鏡哉の脅しにびくともせずニコリと笑って見せる。
一方の鏡哉は高柳のその忠告に嫌な予感がし始めた。
「高柳! 今日は超特急で仕事を終わらせるぞ」
「かしこまりました。すぐご用意いたします」
そう言って畏まって社長室から出た高柳は、にやりと楽しそうにほくそ笑んだ。