籠鳥~溺愛~
「いらっしゃいませ、新堂様」

 
 ドアマンが美冬たちにそう挨拶し、扉を開けてくれる。

 その先はシックな落ち着いた色合いのウェイティングバーとなっていた。

 磨き上げられたアンティークの家具たちが、存在を主張するように光り輝く。

 あまりにも自分に不相応な場所に気後れし、美冬はぎゅっと鏡哉の手を握り返してしまった。

「大丈夫、私がいるから」

 にっこりと微笑まれ、美冬は成す術がなくすすめられた椅子に腰を下ろした。

「すぐお席にご案内いたしますので、しばらくお待ちください」

 光沢のあるスーツを纏ったウェイターが、鏡哉から制服の入った袋を預かり、消えていく。

「き、鏡哉さん。どういうことですか?」

「うん? お腹すかない?」

「す、空きましたけど。こんな所に連れてきてもらう義理はないです。だって、私は――」

 家政婦なのに――。

 そう言おうととした時、先ほどのウェイターが戻ってきた。

「お待たせいたしました、新堂様。お席の用意ができました」

 ウェイターに伴われ、店の奥に入る。

 すると一気に視界が開けた。

 そこは左右の螺旋階段になっており、階下には広いダイニングルームが広がっていた。

 頭上にはきらびやかなシャンデリアが輝いている。

(む、無理! 一般庶民の私には、煌びやかすぎる!!)

 




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気づいた方もいらっしゃると思いますが、オーベルジュ・ド・リルを見本にしています。




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