Le jour du lis de la vallée(スズランの日)
ひとまず席に着くと、口を開こうとした私の唇を佐々木の手が制止した。

「今日はしばらく黙って、俺の話を聞いてくれないか」

いつもとはなんだか違う雰囲気の佐々木に、少しだけドキッとした。

私が乗り出しかけた体を元に戻すと、佐々木は慣れた感じでボーイに合図した。

そして、ゆっくりと私を見る。

「まずは質問だ」

「・・・うん・・・」

「黒沢悠馬と寝た?」

直球な質問に少しだけたじろぐ。

「・・・・」

「・・・やっぱりな」

「・・・だって、ようやく振り向いてもらえたんだもの」

私はフラれた事実を不意に思い出して、少し悲しくなった。

そしてうつむいた私の目の前に、ボーイさんが来てワインをついでくれた。

「絵里子、とりあえず乾杯だ」

・・・何に対して乾杯するのよ

フラれたのがそんなにおもしろいの?

そう思いながらもしぶしぶグラスを持ち上げる。
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