Two of us
「・・っん・・・い、いやっ」

私は一也の体を押し戻し、つかみとろうとする腕をすり抜けて走り出した。

「キミカ!!」

体を預けた先は大きな腕の中。

大好きな人の腕の中だった。

「キミカ、ごめん・・・気づくのが遅くて・・・俺・・・」

私は紘一郎さんが何か言う前に大きく首を横に振った。

「いや、だめだ。責任を取らせて欲しい」

顔をあげると紘一郎さんはまっすぐに私を見つめた。

「・・・責任、だけ?」

お姉ちゃんの代わりに抱かれた上に、さらに責任なんてひどいことするつもりなの?

私は答えを聞く前から涙で頬を濡らしていた。

「・・・責任ってなんだよ、兄貴」

振り向くと一也が私の後ろに立っていた。

見たことのない一也の表情。

怒りに震える唇をかみしめて、それでも声を荒げないようにと手を握りしめていた。

「俺が、彩香と間違えてキミカを・・・」

紘一郎さんの私を抱きしめる腕に力が入る。

「ち、違うの!!私がお姉ちゃんのふりをして・・・それで・・・っ・・・」

「・・・いくら、兄貴でも許せることと許せないことがある」

一也は私を押し退けて、紘一郎さんの襟元をつかみあげた。

「わかってる。おまえの気持ちも、キミカの気持ちも知っていたのに・・・」
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