空の彼方に
6.震えるほど優しく
「ねー、彼方聞いて聞いて」

私はいつものように彼方の部屋に入り浸り、専門書を読んでいる彼方の背中にじゃれついた。

「トーコ。熱っぽいんだから、寝てろって言っただろ」

珍しく彼方が本気で心配してくれるのが嬉しくて、私は寝てるのがもったいなかった。

「きゃ」

それでもずっと背中にしがみついていると、突然彼方が立ち上がる。

「寝てろ」

「だ、大丈夫」

彼方はあっという間に私をお姫様だっこすると、自分のベットにおろした。

優しく毛布をかけてくれる手がすごく優しい。
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