空の彼方に
「大久保くん?」

俺はそれから大学に入学したものの、完全にうわのそらだった。


俺は何のためにここにいるんだろう・・・

何日も何日も考えた。

あの日の喫茶店で、照れたような笑顔の桐子が浮かんでは消えていく。

気がつけば、俺は以前から桐子に似ていると思っていた同じ学部の安西を腕に抱いていた。

「・・・あ・・・」

気がついたときにはもう遅かった。

もうそれは済んでしまったあとで、ただひたすら夢の中で桐子を抱いていた記憶だけが残る。
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