空の彼方に
俺は桐子の肩をそっと抱き寄せると、自分のほうに寄りかからせる。

無理に呼吸をしようとするせいで肺の周りの筋肉がとても疲れるのだと聞く。

こうして寄りかかれればすごく楽だと以前診た患者から聞いたことがあった。

力のない指先が俺の腕に添えられる。

その先は驚くほど冷たく、酸素がいきわたっていないと感じる。

「もう少し楽になったら、点滴しような」

俺はその氷のような指先を一生懸命手のひらで温めた。








夜が明け、気がつけばすでに6時を過ぎている。

ベットでは点滴をした桐子がすーすーと心地よい寝息をたてていた。



もう、大丈夫だな・・・




俺がゆっくりと立ち上がると、ふと桐子のまぶたが持ち上がる。
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