君色
「あ。そういえば、そうだった」

「女性?男性?」

「んー。聞いてない。名前は"岡田伊織"さんだって」

「伊織なら、女かなぁ」

トーコ先生は、私より年下で病弱ながらもステキな絵本を作り出す絵本作家。

小さな体にふわふわした髪がかわいくて、話があうので妹みたいな存在だ。

「もートーコ先生は、彼方先生以外本当興味ないんだからー」

みっちゃんは、トーコ先生をからかいながらそろそろお茶の時間だとデスクを立ち上がった。

トーコ先生が大好きな彼方先生ってのは、お隣の家に住む幼馴染の男の子のことで、つい最近インターンを終えてようやく帰ってきたらしい。

何度かここにも顔を出してくれたので、私も顔見知りだ。

でも、うらやましいな・・・

小さいころから結婚を約束した中で、長い間離れていてもまだあんなに恋愛できるなんて・・・

私はトーコ先生の嬉しそうな横顔を見ながら、ティータイム専用テーブルを片付けた。
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