君色
「ようこそ、リストランテオカダへ」

まるでお店のボーイさんのような仕草で中へと促され、玄関に足を踏み入れた。

正直私は外での外食が苦手だった。

それに気がついてくれたのかな・・・

一歩踏み入れたその部屋は、すごくきれいに片付いていて、真面目な伊織さんらしい部屋だった。

エプロンをつけた伊織さんがキッチンの中に入っていったので、私はカウンターテーブルに座った。

「メニューは?」

「カルボナーラ、ペペロンチーノ、アラビアータ・・・なんでもあります」

「じゃあ、カルボナーラ・・・」

「承りました」

おどけながら言う伊織さんは、カウンターの向こう側からグラスを2脚取り出しワインをついだ。

「少しなら、飲めるよね?」

「あ。はい・・」

「じゃあ、乾杯」

カチンと透き通った音でグラスが重なる。
< 35 / 81 >

この作品をシェア

pagetop