私と黒猫
ある角を曲がった時、あの喫茶店が見えた。
「あった…!」
なんの躊躇もなく店の中に入る。
コーヒーのいい香がする。
「いらっしゃいませ」
落ち着いていて、気取らない店主らしい人の声が聞こえた。
店の中は声と同じように、落ち着いる。
やはり声の主は店主だろう。
流れている音楽はジャズだろうか。私にはよく分からない、が雰囲気によくあっている。
この感じ、好きだ。
店の隅の窓際に座ると、
「ご注文は?」
という落ち着いていて、気取らない声が聞こえた。
「あ、えっと、あの、ミルクティー、を」
「かしこまりました」
と言うと店主はにこりと笑った。
もう一度店の中を見回す。
すると向こう側の窓の外に動くものが見えた。
よく見ると、猫のようだ。