私と黒猫
「……そうだけど」
……ですよねー。
何ていうか、すごく気まずい。
「……その、ミザリーの飼い主なの?さ、斎藤くんは。」
「違う。こいつ野良なんだ。」
「そ、そうなんだ。」
……本当にどうしたらいいのか。
気まずいし、なんだか怖いし。
彼はずっとこちらを見ている。
苦しい沈黙。
「さ、斎藤くんは、ここら辺に住んでるの?」
「うん。あそこ。」
そう言って指をさしたのは赤い屋根の家だった。
よく遊びに来るんだよ、こいつ。
と、しゃがんでミザリーを撫でながら言う。
「そうなんだ……ふふっ」
なんだか全然刺々しくなくて、緊張していた自分が馬鹿らしくなって、笑ってしまった。
「何?」
いきなり笑いだした私を不思議そうに見る彼を見て、また笑ってしまった。
「ううん、斎藤くんって…と思って。」
「意味分かんないし、まぁ、不良とか言われるけど…そんなんじゃねーし。」
これには驚いた。
「不良じゃないの?」
「なんで不良になるの?」
質問を質問で返された私は悩むしかなかった。