真実の永眠
45話 沈黙
二月になった。
広島に来て四ヶ月と少し経つというのに、私は未だに友達が一人も出来なかった。友達も出来ず、いつも妹の夕海と一緒にいて、休みの日は暇そうに過ごす私を心配してか、兄がとあるサイトを紹介してくれた。
最近は、それに夢中になってしまっている。
SNSで友達……? と言って偏見を持っていたし、ネットで知り合う相手を信用出来るのかと思っていたけれど、ある女の子に出会い、その考えをすぐに改めた。
ある女の子――河野(こうの)なぎさとの出会い。
私は一生の友達と呼べる友達が出来た。奇跡のような出会い。
なぎさとの出会いが、なぎさがくれる言葉一つ一つが、いつも私を支えてくれていて、心を救ってくれていた。
そう思える程に、なぎさが紡ぎ出す言葉は優しくて、優しい心を持っていた。
歳は私の三歳下で、現在は十六歳。高校一年生だ。夕海と同い年。
素敵な友達が出来て本当に嬉しかった。
まだ会った事はないけれど、何となく感じる。一生付き合って行ける友達なんだって。きっとずっと大好きな友達になるんだって。
優人とは、あれからもずっとメールのやり取りは頻繁にしていた。
優人は学生だから、勉強・実習・テストにバイトと、忙しない日々を送っていたようだけれど、それでもメールはしていた。たまに疲れていてすぐに寝てしまう事もあったけれど、素っ気なさもなかったし、冷たいと感じる事もなかった。
もう二月だ。今年もこの時期がやって来た。そう、バレンタインデー。
今年は、優人に会える。昨年は、会えなかった。
麻衣ちゃんや中本さんの協力を仰ぎ漸く優人に渡った贈り物。それでも届いたから嬉しかったけれど、やっぱり直接会って渡したかった。今年は会える。だから本当に嬉しかった。
優人はその日、会う時間を作ってくれるのだそう。
私は本棚からお菓子の本を取り出した。
――今年は何を贈ろうか。
ページをパラパラと捲り、うーんうーんと低く唸る。
今年のバレンタインデーは、きっと今までよりも大切な日になる。私の全ての想いを、ぶつける日。全てを贈り物に託す日。
だけどもう、告白はしない。今年、私はそう固く決意した。
「!」
私は、あるページで手を止めた。
――よし! これにしよう。
今年贈るものは、フィナンシェと生チョコに決めた!
この三年間の想いを、全て込めて作ろう。優人がずっと好きだった、この想い。
ありがとうの気持ち、ごめんねの気持ち、嬉しかった・幸せだった時の想い、辛かった時のあの想いも。全部全部、たった一つの贈り物に込めて、託すんだ。
そこに言葉はいらない。
好きと言いたいけれど、大好きと言いたいけれど、……愛してるなんて言えたらいいけど、そんな言葉さえ、私にはちっぽけに思えてしまって。
優人への想いはそんな言葉じゃ足りない程大きくて、だけど、どんな辞書を引いても、ピッタリの言葉なんて載っていないから。言葉なんて、やっぱりいらないんだ。全ての想いを贈り物に込めて、笑顔で優人に渡せたらいい。手渡す瞬間に存在していいものは、沈黙だ。だからもう、告白はしない。
優人だって、分かっている筈だ。きっと、何もかも知っている。過去に何度か想いは伝えてあるし、三度目のバレンタインデーだ。私の想いは、きっと優人に届いてる。後は優人の気持ちを待つだけなんだ――。
パタンと、両手で本を閉じた。
バレンタインデーは、どんな日になるだろう。
私の想いは、届くだろうか。あの笑顔を、ずっと見られるだろうか。
それとも……。
私の願いは、叶うだろうか。あの笑顔を、失ってしまうだろうか。
失いたくない、大切な笑顔。優人が笑ってくれると、嬉しくなる。それだけで、心が満たされる。優人が笑ってくれるから私も笑えるんだ。優人が笑わない事程、辛い事はない。
確かな想いを胸に、歩いて行こう。
広島に来て四ヶ月と少し経つというのに、私は未だに友達が一人も出来なかった。友達も出来ず、いつも妹の夕海と一緒にいて、休みの日は暇そうに過ごす私を心配してか、兄がとあるサイトを紹介してくれた。
最近は、それに夢中になってしまっている。
SNSで友達……? と言って偏見を持っていたし、ネットで知り合う相手を信用出来るのかと思っていたけれど、ある女の子に出会い、その考えをすぐに改めた。
ある女の子――河野(こうの)なぎさとの出会い。
私は一生の友達と呼べる友達が出来た。奇跡のような出会い。
なぎさとの出会いが、なぎさがくれる言葉一つ一つが、いつも私を支えてくれていて、心を救ってくれていた。
そう思える程に、なぎさが紡ぎ出す言葉は優しくて、優しい心を持っていた。
歳は私の三歳下で、現在は十六歳。高校一年生だ。夕海と同い年。
素敵な友達が出来て本当に嬉しかった。
まだ会った事はないけれど、何となく感じる。一生付き合って行ける友達なんだって。きっとずっと大好きな友達になるんだって。
優人とは、あれからもずっとメールのやり取りは頻繁にしていた。
優人は学生だから、勉強・実習・テストにバイトと、忙しない日々を送っていたようだけれど、それでもメールはしていた。たまに疲れていてすぐに寝てしまう事もあったけれど、素っ気なさもなかったし、冷たいと感じる事もなかった。
もう二月だ。今年もこの時期がやって来た。そう、バレンタインデー。
今年は、優人に会える。昨年は、会えなかった。
麻衣ちゃんや中本さんの協力を仰ぎ漸く優人に渡った贈り物。それでも届いたから嬉しかったけれど、やっぱり直接会って渡したかった。今年は会える。だから本当に嬉しかった。
優人はその日、会う時間を作ってくれるのだそう。
私は本棚からお菓子の本を取り出した。
――今年は何を贈ろうか。
ページをパラパラと捲り、うーんうーんと低く唸る。
今年のバレンタインデーは、きっと今までよりも大切な日になる。私の全ての想いを、ぶつける日。全てを贈り物に託す日。
だけどもう、告白はしない。今年、私はそう固く決意した。
「!」
私は、あるページで手を止めた。
――よし! これにしよう。
今年贈るものは、フィナンシェと生チョコに決めた!
この三年間の想いを、全て込めて作ろう。優人がずっと好きだった、この想い。
ありがとうの気持ち、ごめんねの気持ち、嬉しかった・幸せだった時の想い、辛かった時のあの想いも。全部全部、たった一つの贈り物に込めて、託すんだ。
そこに言葉はいらない。
好きと言いたいけれど、大好きと言いたいけれど、……愛してるなんて言えたらいいけど、そんな言葉さえ、私にはちっぽけに思えてしまって。
優人への想いはそんな言葉じゃ足りない程大きくて、だけど、どんな辞書を引いても、ピッタリの言葉なんて載っていないから。言葉なんて、やっぱりいらないんだ。全ての想いを贈り物に込めて、笑顔で優人に渡せたらいい。手渡す瞬間に存在していいものは、沈黙だ。だからもう、告白はしない。
優人だって、分かっている筈だ。きっと、何もかも知っている。過去に何度か想いは伝えてあるし、三度目のバレンタインデーだ。私の想いは、きっと優人に届いてる。後は優人の気持ちを待つだけなんだ――。
パタンと、両手で本を閉じた。
バレンタインデーは、どんな日になるだろう。
私の想いは、届くだろうか。あの笑顔を、ずっと見られるだろうか。
それとも……。
私の願いは、叶うだろうか。あの笑顔を、失ってしまうだろうか。
失いたくない、大切な笑顔。優人が笑ってくれると、嬉しくなる。それだけで、心が満たされる。優人が笑ってくれるから私も笑えるんだ。優人が笑わない事程、辛い事はない。
確かな想いを胸に、歩いて行こう。