しだれ桜の木の下で
階段を一段ずつ降りてリビングのドアを開けると、美味しそうな香りが私の鼻をくすぐった。
「おかーさん、おはよ!」
台所にいくといつものようにお母さんは振り返りおはよ。と返した。
「もう具合は平気みたいね」
「へ?」
私の様子を見て、ホッとしたようにお母さんは言った。
「一体、何のこと?」
「あんた昨日道端で倒れてたじゃない。………もしかして覚えてないの?」
「……全然覚えてない」
お母さんは私の顔を見てから、しょうがないか…とつぶやくように言った。
「何がしょうがないの?」
思わず問いかける。
すると、お母さんは目を見開いた。