しだれ桜の木の下で
✿epilogue
「おかあしゃん、これとっていい?」
その言葉にギョッとして慌ててとめる。
「ダ~メ! これとったら桜さんイタイイタイだよ!」
「えっ?!? しゃくらしゃんもイタイイタイなるの?」
「そうだよ~。 桜だって指取られたらいたいでしょ?」
そう言うと桜はうーん、と考えこんで、慌てて枝を離した。
「ごめんねぇ! 絶対にしないから、許して~」
枝垂れ桜の幹に抱きついて、泣きながら謝る娘の姿は何とも微笑ましい。
「ここか………綾の思い出の場所って」
その声を聞いて振り向く。
そこには息子を肩車した夫の姿があった。
「そうだよ。 ずっと来たかったんだ」