餞の言葉
餞(はなむけ)の言葉
暖房の効いた図書室を出ると、冷たい空気があたしの体を包む。
鉄筋の校舎は、いくら温めても芯から温まる事は無い。
パタパタと廊下を走りながら感じる、身をすくめてしまうほどの冷たい風は、あたしの勇気をしぼませようと計画してるに違いない。
負けるもんか。
そう思って、理科準備室の前に立つ。
小さくノックすると、「はい?」という右上がりの声がする。
「は、入ります!」
そーっとドアを開けると、カタカタというキーボードを打つ音が響いてきた。
先生はちらりと顔を上げると特に感情を含まない声で呟く。
「何だ山名(やまな)。まだ帰ってなかったのか」
視線はすぐにパソコンへと戻ってしまう。
悔しい。
そんな無機質な機械より、現役女子高生の方が見ごたえあるって思わないの?
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