餞の言葉
「俺も教師だからな。……お前たちに餞(はなむけ)の一つくらい言わないとな」
「せんせー、餞って何?」
「お前、もう一回高校生活やり直すか?
餞ってのは、新たな門出に対してお祝いの気持ちを込めて贈ることだよ」
「へー。なんかかっこいー」
誰かのそんな声に皆が笑いだす。
だけど先生は、特に大笑いしたりも怒りだしたりもせず、口元に笑みを浮かべたままだ。
「もう皆、18歳になったか? まだ1人くらいは17歳がいるか?」
「俺、来週誕生日」
男子が一人答える。
先生はそれにも笑顔で頷いた。
メガネ越しの瞳が、何だかとてもあったかく感じる。
「君たちにとって、高校という場所は広かったかい?」
昨日と似たような事を先生は口にした。