餞の言葉


「子供に許されること。……それは、失敗することだ」

「……」

「失敗の無い人生なんてない。
人は生きていれば、どこかで必ず失敗するものだ。
でもそれは、大人になればなるほど、叱責されるものになる」


その言葉に、皆は再び静まりかえった。


「俺は皆に、残された後2年間のうちに、たくさん失敗を経験していってほしい。
失敗を恐れず、がむしゃらに向かっていくことは、若くなければ出来ない。
そして、その経験が無ければ、本当の意味で大人にはなれないんだ」


先生は左端から順々に、皆と目を合わせていった。


「20歳になれば、大人だと言われる。
そう、言われるだけなら簡単だ。
けれども本当に、自立した大人になるためには、さまざまな経験が必要だ。
大人になるには、子供だったという経験が必要なんだ。

つまり、きちんと子供であることを体験しておかなければいけない」


先生の視線は、次々とクラスメートをとらえる。

そうして、ついにあたしのところまでやってきた。

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