餞の言葉
その後も、優しい声で紡がれる言葉。
皆に、希望と夢を持って立ち向かってほしいと話す彼は、あたしたちにとってやっぱり、男では無く教師なのだろう。
「いつか皆がこの学び舎を訪れた時に、こんなにちっぽけだったのかと思えるよう、広い世界を見てきてほしい」
あたしたちにとって、生活の大半だった高校。
それがいつか小さな過去になる頃、ようやくあたしたちは大人になれる。
「……以上。皆、卒業おめでとう」
先生が言葉を結んで礼をする。
一人、二人と自然に手を叩き、次第に大きな拍手に変わる。
あたしの目はもう涙でいっぱいで、恥ずかしそうに笑う先生の顔もマトモに見れない。
強く強く手を叩きながら、胸に残った気持は、先生の生徒で良かったって事。