餞の言葉
荷物を皆カバンに詰めて、この教室ともサヨナラする。
先生と一人ずつ握手をしながら、教室のドアをくぐって行くのを見るのは結構泣ける。
ようやく止まった涙がまたあふれ出しそうで、すでにびしょぬれになったハンカチで目を押さえた。
一人一人と教室から消えていく。
私はわざと、最後になるようにのろのろと準備をした。
「山名、最後だぞ」
先生にまでそう追い立てられて、私はようやく席を立つ。
「鼻赤いぞ」
「感激したんです。先生の語りに」
「そうか」
先生は心なしか嬉しそうに笑った。
手を差し出して、「頑張れよ」と呟いてくれる。
あたしはその手を握り締めて、……離したくなくて握り続けた。
多分痛かったんじゃないかと思う。
そのくらい、強い力で握り締めた。