餞の言葉
「あたしっ、……先生が好きです」
「おい」
「聞いて。本当に、本当に先生が好き」
「……山名」
「だからもっと色んな経験をしてから出直して来ます」
また一粒涙がこぼれ出す。
こんな風に我儘が言えるのも、やっぱりあなたが大人であたしが子供だから。
どうしようもなく越えられない距離に、あたしは悲しいのと同時にどこかで安心もしている。
先生は自分のハンカチを取り出して、あたしに手渡してくれた。
「その頃には、もっといい男が見つかってるよ」
あたしはハンカチを受け取って、涙を拭く。
鼻をくすぐるのは、嗅ぎなれない苦い匂い。
これが、先生の香りなのかな。
「そうしたら、先生に見せつけに来る。
彼氏が出来ても、出来なくても関係ない。
大人になったあたしを見せたいの」
「はは」