餞の言葉
先生は、一瞬呆けたような顔をしたけれど、人差し指でメガネを直すとそのままキーボードに向かい出した。
カタカタカタ……。
再び流れる無機質な音に、あたしは軽く苛立ちながら先生に一歩にじり寄る。
「先生。返事して」
「なんの」
「だから、告白の返事!」
あたしは真剣なの。
分かって、お願い先生。
だけど、先生はメガネの向こうから一瞥するだけ。
「冗談じゃないの。あたしは先生が好き」
「冗談じゃないと困るんだよ。山名」
予想外のにこやかな顔で応対されて、あたしはぐうの音も出ない。