餞の言葉


「……山名にとって、学校はどうだった?」

「なに、それ」

「高校生活。満喫してたかい?」


今度は取り繕った笑顔ではなく、"先生"の顔で笑う。

その顔やめてよ。
その顔で見られたら、"生徒"の顔をしない訳にはいかないじゃない。


「楽しかった、それなりに。もっと楽しい事が待ってる。……そう思ってる」

「そうだな。それでいい」

「だから告白してるの。
もう卒業だもん。もう生徒じゃなくなるんだよ?
あたし、ずっと先生の事好きだったの。2年生の時から。

先生、こんな若い子から言い寄られて、嬉しくないの?」

「光栄だな、とは言っておくよ」


視線は再びパソコンへ向かってしまう。

28歳の先生は大人。
あたしより10歳も年上。

だからダメなの?
あたしは子供だから?

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