時計兎
「それ」は口元を歪ませ、陽炎のように見える禍々しい漆黒の気と共に近づいてくる。




「それ」は黒い人型をした何か



絶望が呼吸している



そう感じた刹那、「それ」の持っていた刃物が僕の首を舐めた。

僕は宙を舞う。
鮮血が飛沫し、地面の朱をさらに強くする。




地面に落ちた僕は「それ」が倒れた僕を引き裂き内臓を喰らう様子を見つめていた。



今、懦動する腸をすすり、鼓動する心臓を飲み込んでいる。





時間が体を蝕むようだ

「それ」からは何者も逃れることはできない




「それ」が僕を喰らい終えると、僕の眼を冷然と見つめ、血に染めた手を僕に伸ばした。
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