時計兎
良心が声をかけるように命じた。
瀕死かもしれない少女を見て見ぬ振りなど到底できない。

もし
血にまみれていたら。

内臓がえぐられていたら。

爪を弾かれ目を潰されていたら。


そう考えると少女までの距離は数メートルだったが、足がすくむ。

それでも良心に背中を押され、自らを鼓舞し、少女に近付く。


ただ声をかけるだけ。

そう思っていた。
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